「株はドルコスト平均法と一括投資、どっちで買うのがいいの?」
「今すぐ投資したほうがいいの?それとも貯めてから始めたほうがいい?」
「市場が下がってきたけど、このタイミングで投資して大丈夫?」
このような疑問を持っている方は多いのではないでしょうか。データや理論だけでなく「人間には感情がある」ことを考慮しないと、最適な投資方法は見つかりません。
本記事では、FPとして1日3組の個別コンサルを10年以上行ってきた経験がある私鬼塚が、ドルコスト平均法と一括投資について詳しく解説します。
- シミュレーション結果の比較
- 向いている人の特徴
- ドルコスト平均法・一括投資それぞれのメリット
初めて投資を検討している方はもちろん、すでに投資を始めている方にも参考になるので、ぜひ最後までお読みください。
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ドルコスト平均法(積立投資)と一括投資とは?
ここでは、投資における2つの代表的な手法について詳しく紹介します。
- ドルコスト平均法
- 一括投資
それぞれ見ていきましょう。
1. ドルコスト平均法
ドルコスト平均法は毎月27日に3万円を投資するというように、定期的に一定金額を投資する方法で、積立投資とも呼ばれます。
相場が高いときは購入数量が少なくなり、安いときは多くなるため、平均購入単価を自然に抑えられるのがメリットです。
ドルコスト平均法は、投資タイミングを分散させることで、市場の一時的な変動に左右されにくいのが特徴です。相場をシビアに見る必要がないため投資初心者でも始めやすく、長期的な資産形成に適しています。
ドルコスト平均法についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
2. 一括投資
一括投資は、100万円を一気に投資するというように、まとまった資金を一度に投資する方法です。投資元本全額に対して早期から複利効果を得られるため、ドルコスト平均法と比較して資産形成のスピードが速くなる傾向にあります。
一括投資における最大の特徴は、市場の上昇局面で大きなリターンを得られることです。
ただし、相場が下落した場合は大きな損失を被る恐れもあるため、自分のリスク許容度の範囲内で投資額をコントロールする必要があります。
一括投資のシミュレーションについては、以下の記事を参考にしてみてください。
【期間別】ドルコスト平均法と一括投資のシミュレーション
ここでは、ドルコスト平均法(積立投資)と一括投資どちらが有利なのかについて、過去のデータを参考に投資期間を5年間と10年間にわけて、徹底的に検証します。
- 2012年3月末~2017年3月末までの5年間
- 2007年3月末~2017年3月末までの10年間
- 1989年以降における10年間
それぞれのケースについて見ていきましょう。
1. 2012年3月末~2017年3月末までの5年間
今回参照するデータは「セゾン・グローバルバランスファンド」という投資信託です。株式と債券に50%ずつ分散投資を行っており、投資信託のなかではバランス型と呼ばれます。
積立投資と一括投資の条件は、以下のとおりです。
積立投資 | 毎月33,333円を積み立てて総額200万円を投資 |
一括投資 | 200万円を一括で投資 |
投資結果は、以下のようになりました。
一括投資(黄緑色)が約335万円、積立投資(赤色)が約238万円となり、この期間においては一括投資のほうが有利だったことがわかります。
2. 2007年3月末~2017年3月末までの10年間
次に、2007年3月末~2017年3月末までの10年間における積立投資と一括投資の投資結果を見ていきます。それぞれの投資条件は、以下のとおりです。
積立投資 | 毎月33,333円を積み立てて総額400万円を投資 |
一括投資 | 400万円を一括で投資 |
投資結果は、以下のようになりました。
投資期間が2007年3月末~2017年3月末までの10年間の場合、積立投資(赤色)が約566万円、一括投資(黄緑色)が約506万円となりました。
この期間においては、積立投資のほうが有利だったことがわかります。
しかし、今回のデータは2017年3月末までの5年間と10年間という限られた期間のデータであるため、より長期間のデータで比較する必要があるでしょう。
そこで、1989年までさかのぼってより長期的なデータで運用成績を比較してみます。
3. 1989年以降の10年間
ここからは、1989年1月~2015年9月までの27年間において4資産に均等分散したデータを参照します。
4資産均等分散とは
国内株式・国内債券・外国株式・外国債券にそれぞれ25%ずつ均等に分散投資すること
積立投資と一括投資における投資結果は、以下のとおりです。
積立投資をした場合、平均利率は24.9%であるのに対し、一括投資は平均利率が54.8%となり、倍以上の差が付きました。一括投資のほうが投資成績が良い理由は、複利効果があるからです。
積立投資は、今月投資したお金は10年間働いてくれますが、9年目に投資したお金はわずか1年間しか働いてくれません。一方、一括投資は最初に投資した資金全額が10年間分働いてくれます。
つまり、一括投資のほうが複利効果が働きやすく、雪だるま式に資金が増えていくのです。
もう一点、特筆すべきなのは一括投資では元本割れしている期間がないことです。積立投資の場合、2009年あたりにオレンジ色のグラフが0の線を下回っているのに対し、一括投資はどの期間においても0のラインを割っていません。
このことから、ドルコスト平均法は万能ではなく、出口付近で暴落すると損をする恐れがあることがわかります。
【毎月1万vs一括12万】ドルコスト平均法と一括投資のシミュレーション
ここでは、2000年1月から2023年11月までの24年間における投資成績を比較します。それぞれの投資条件は以下のとおりです。
積立投資 | 毎月1万円ずつ投資 |
一括投資 | 毎年1月に12万円を一括で投資 |
どちらも投資総額は、287万円です。
● 投資結果
24年間の投資結果を見ると、3つの指数すべてにおいて、一括投資のほうが優れているという結果になりました。
とはいえ、途中経過では積立投資のほうが有利な年もあったのではないかという疑問も生まれます。
そこで、年ごとに検証したデータも確認してみましょう。
● 年ごとに比較
結論からいうと、いつ始めたとしても基本的には「毎月積立」より一括投資のほうが有利でした。
TOPIX | S&P | MSCI-ACWI | |
---|---|---|---|
年数 | 19年 | 22年 | 21年 |
勝率 | 79% | 92% | 88% |
では「毎月積立」のほうが有利だった年は、どのような年だったのかを見ていきましょう。
● 毎月積立のほうが有利だった年は?
3つの指数すべてにおいて「毎月積立」が有利だったのは、2002年と2008年の2回だけです。この2年間のS&P500の推移を見てみると下落していることがわかります。
つまり、年初に一括で投資すると、その年に投資した分はすべて下落したため、一括投資の成績は振るわなかったのです。
一方「毎月積立」は、1月に投資した分は大きく下落したものの、11月・12月に投資した分は大きな損失を免れました。そのため、2002年と2008年においては、一括に比べると積立のほうが損失を抑えられたといえます。
以上の結果より、2002年と2008年の2年間以外は、積立投資より一括投資のほうが有利であることが分かりました。
ドルコスト平均法(積立投資)のメリット
シミュレーションの結果では、一括投資のほうが有利という結果になりましたが、ドルコスト平均法(積立投資)にもメリットはあります。ここでは、積立投資の利点について解説します。
- 先取り貯蓄ができる
- 少額から始められる
詳しく見ていきましょう。
1. 先取り貯蓄ができる
毎月決まった額を投資資金として証券口座に積み立てることで、先取り貯蓄を実践できます。
先取り貯蓄として積立投資を活用する際は、自動で証券口座に決まった額が入金される設定を活用しましょう。
手動では、入金自体を忘れてしまったり投資に回すはずのお金を他のことに使ってしまったりするかもしれません・・・。
そのため、自動積立設定を活用し無意識に積立投資が実行される環境を整えることが大切です。投資が習慣化されれば、将来に向けた着実な資産形成が可能となり、長期的な財務計画を立てられるでしょう。
2. 少額から始められる
積立投資は、投資額の負担を小さく抑えられるのが特徴です。まとまった資金がなくても、月々の収入から無理のない範囲で投資を始められます。
毎月の投資額は、自身の収入や貯蓄額によって柔軟に設定できるため、ライフスタイルや収入に応じて調整が可能です。
積立投資は最初の心理的ハードルが低いため、若い世代や投資初心者にとって大きな魅力といえるでしょう。
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一括投資のメリット
次に、一括投資ならではのメリットについて詳しく解説します。
- 無駄遣いを防げる
- 短期間で高い利回りを得られる可能性がある
それぞれ見ていきましょう。
1. 無駄遣いを防げる
まとまった資金を投資に回すことで、その資金が日常的な消費に流れるのを防げます。
手元に大きな現金を置かないことで、衝動的な支出を抑制できるからです。
とくに、退職金や相続金などまとまった資金を受け取った際に、一括投資の資金にすることで、長期的な資産形成の基盤を築けるでしょう。
2. 短期間で高い利回りを得られる可能性がある
相場が上昇するタイミングで一括投資した場合、積立投資よりも短期間で大きなリターンを得られる可能性があります。
たとえば、わずか1ヶ月で価格が5%上昇したと仮定すると、100万円の一括投資なら5万円の含み益となりますが月1万円の積立投資では500円の含み益にとどまります。
ただし、大きく値上がりしたとしても目先の利益欲しさから感情的に売却することがないよう注意が必要です。
一括投資よりドルコスト平均法(積立投資)が向いている人
積立投資より一括投資のほうが利回りが高いというデータがあるからといって、すべてのひとに一括投資をおすすめできるわけではありません。
とくに、損するのが怖いという気持ちが強い人は一括投資ではなく積立投資のほうが向いているでしょう。
過去にコンサルした方に、資産を大きく増やしたいということで、株式100%で投資を始めた方がいました。
しかし、投資をスタートしてすぐにギリシャ危機に見舞われました・・・。
その方が投資していたのは先進国の株式だったため、日本・アメリカ・イギリスで見ても数%しか下がっていません。
大した下落でなかったとしても「損をしたくない」という感情に引っ張られると、投資を辞めたくなってしまうのも無理はないでしょう。
積立か一括かを決めきれない場合は、折衷案を採用するという方法もあります。
たとえば、元手が1000万円あるとして、半分の500万円を一括投資し、残りを積立投資用の資金として確保するという方法です。このような方法をとると、積立投資と一括投資両方のメリットを受けられるでしょう。
ドルコスト平均法と一括投資においてよくある質問
最後に、ドルコスト平均法と一括投資に関するよくある疑問について解説します。
- 現金を貯めておいて来年から一括投資したほうが良い?
- いくら投資するべき?
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1. 現金を貯めておいて来年から一括投資したほうが良い?
手元に投資できる資金がある場合は、今からでも投資を始めるべきです。長く運用するほうが、複利効果が大きくなります。
積立投資より一括投資のほうが運用成績が良かったのは、市場に資金を投資していた期間が長かったからです。そのことから考えると、すぐに投資すべき理由がわかるでしょう。
投資を先延ばしにすることで失われる複利効果は大きいものです。市場タイミングを待つのではなく、リスクを分散しながら早期に投資を開始することをおすすめします。
2. いくら投資するべき?
投資する額は、目的を達成するのに必要な投資額を逆算して決めましょう。お金を貯める目的によって、目標金額と必要になるタイミングは異なります。
お金を貯める目的と金額・タイムリミットを明確にすれば、自ずと必要な投資すべき金額が見えてきます。
「成長投資枠の上限金額である240万円を一括投資する」と回答される方は多いですが、本質的ではありません。
新NISAの枠に縛られるのではなく、本来の目的に照らし合わせて投資額を決めることが大切です。NISAの枠をはみ出た部分は、特定口座を利用しても良いでしょう。
ドルコスト平均法vs一括投資なら長期的には一括が有利
短期的には積立が有利なケースもありますが、長期的には一括のほうが有利です。ただし、損するのが怖いという感情が強い方は、積立投資のほうが向いています。
自身のリスク許容度を考慮しつつ最適な投資スタイルを見つけましょう。
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